カテゴリ:靴

靴は愛情をかければそれだけ返ってくる。



「何してるの?」

甥っ子から笑顔で質問された。



夏の玄関は幾分か涼しい。

庭から玄関に一直線に伸びた廊下。

そこを通り抜ける風は、夏の暑さを少し和らげる。

そう言えば猫も夏場は玄関に寝そべってたっけ。

そんな玄関で僕は靴磨き。

ローテーションしているからそこまで
汚れているわけではないけれど、

それでもやっぱり磨く前と後では別物。

そんな日常にある小さなビフォー・アフターを求め
靴磨きをしている僕の背後から「何してるの?」と
甥っ子が問いかける。

「靴を綺麗にしているんだよ」と言うと、
「やっぱり綺麗だと嬉しいよね」と無垢な笑顔が
僕に向けられる。

「綺麗だと嬉しい」

まだ自分で靴紐も結べない子供でもこんな感覚が
あるんだなあと感心しながら、僕はふと新橋駅の
靴磨き職人のことを思い出した。

「靴は愛情をかければそれだけ返ってくる。」

独学で靴磨きをしていたけれど、中々思ったように
仕上がらないことを理由に、何件か靴磨き屋を回って
色々と質問をしていた。

「クリームはどのくらいつけたらいいのか?」

「鏡面磨きはどうやったらできるのか?」

「やっぱり水を使った方がいいのか?」

「仕上げ用のクロスを買った方がいいのか?」



そんな中、新橋駅の銀座口で、ある一人の靴磨き職人と出会った。

古希は近いであろうその職人は、大胆だけど丁寧に
僕の靴を磨きながら色々と教えて下さった。

その人の手は太く黒く汚れ爪の間まで靴墨が入り込んでいる。

そんな手が絶え間なく動いている。

一見、無機質的にも感じられるその動き、でも
僕にはその動き、所作に美しさを感じていた。

そして、そんな流れの先にある僕の靴は、5分程度で
青空を映し出すくらい輝いていた。

「やっぱり違いますね。あと、色々と教えて下さって
 ありがとうございます。」

やっぱり靴が綺麗だと嬉しいもの。

僕は笑顔でその職人にお礼を言った。

そして年期の入った木造の椅子から立ち上がり
帰ろうとする僕に彼はこんなことを言ってくれた。

「靴はいつも綺麗にしておいた方がいいですよ。

 でも、別にいつもピカピカに光らせておく必要はないよ。

 日常はブラッシングをするだけでもいい。

 それで月に1回くらいクリームを入れてあげる。

 あとやり方なんて人それぞれだよ。
 
 好きなように磨いて綺麗にしてやって下さい。

 靴は愛情をかけただけ返ってきますから。

靴への愛情

100円をかけて100円が返ってくる。

このくらいわかりやすかったらなんてたまに思う。

確かに綺麗な靴は履いていて気分はいい。

気分はいいけど、これが返ってきたもの?って
感じもするから。

でも最近は、新橋の靴磨き職人が言っていたことが
何となくわかるんだ。

甥っ子が僕に向けた「綺麗だと嬉しいよね」
という「笑顔」。

つまりはそういうことなのだろう。



ここまでありがとうございました。

山本



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