隷属への道 ~第一章 見捨てられた道~

隷属への道
著者:F・A・ハイエク
訳者:西山 千明
発行:春秋社
-隷属への道 目次-
- 第一章 見捨てられた道
- 第二章 偉大なユートピア
- 第三章 個人主義と集産主義
- 第四章 計画の「不可避性」
- 第五章 計画化と民主主義
- 第六章 計画化と「法の支配」
- 第七章 経済統制と全体主義
- 第八章 誰が、誰を?
- 第九章 保障と自由
- 第十章 なぜ最悪の者が指導者となるのか
- 第十一章 真実の終わり
- 第十二章 ナチズムの基礎としての社会主義
- 第十三章 われわれの中の全体主義者
- 第十四章 物質的条件と道徳的理想
- 第十五章 国際秩序の今後の展望
こんにちは。
山本です。
先日有楽町にある阪急MEN'S TOKYOのB1Fにあるシューリペアの店員さんと30分程度靴に関するマニアックな会話を楽しんでいた際に、こんなやりとりがありました。
店員 : 「僕の友人に靴磨き屋の社長がいるんですけど、その人の夢が素敵なんですよね!」
山本 : 「どんな夢なんですか?」
山本 : 「息子さんが幼稚園に通ってるんですけど、よく幼稚園で『将来何になりたい?』って聞くやつあるじゃないですか?」
山本 : 「ベタにケーキ屋さんとか野球選手とかってやつですよね」
店員 : 「そうそう。で、その友人の夢は園児の将来なりたいものの中で“靴磨き職人”をトップ10に入るようにしたいって事なんですよ」
山本 : 「おおー」
店員 : 「僕も靴自体が大好きだから、今の仕事以外で彼と別の仕事とかして靴磨き職人がもっとメジャーなるよう、同じ方向を向いてやってるんですよね」
山本 : 「めっちゃ素敵な夢ですね!」
店員 : 「まっ酒の席ですので熱い靴談義の後はナンパしにいっちゃたりするんですけどね(笑)」
ちなみに、その彼がカウンター奥で作業している若い職人を紹介してくれたのですが、その子は開口一番
- 「いや~お客様の靴を見るのが好きで好きで。好きを仕事にしちゃいまして」
って笑顔で話してきました。
最初に話をしていた店員さんも、その友人の社長さんも、若いシューリペア職人さんも、皆「好きを仕事」にしているという共通点がありました。
そんな「好きを仕事」にしている人は共通して、目が輝いてるんですよね。イキイキしてるし、何よりも話していて楽しい。
例え靴以外の会話だとしても、彼らに魅力を感じる人は多いと思います。
だって、彼らには活力が溢れてますから。
自分が情熱を傾けられる対象を忘れがちな今日この頃。自己理解が人間力アップに欠かせないということを再確認させてくれた靴大好き職人の2人に感謝しつつ、本日の読書考察いってみましょう!
1.要約
隷属への道も『大衆の反逆』同様に各章毎で要約していきます。
【第一章 見捨てられた道 要約】
個人主義を基盤とする西欧文明に対する思想変化と、人々の意図的な力が全体主義をもたらす。
階級解放による経済発展が、社会の諸力理解を要求する自由主義の衰退~反感~西欧思想の逆転へと繋がり、結果社会主義システム創出~信奉となってしまった。
2.ハイエク×ジン(from『HUNTER×HUNTER』)
隷属への道の第一章を読んだ今「そうだよなぁ。やっぱり原理原則を追い求める態度は必須だよね」などとわかった気になってしまいますが、実際に自分がその時代に生きていたとして、ハイエクと同じ疑問を持てたか?というと、できなかったと思います。
それはなにも当時のヨーロッパで考える必要もなく、今の世界に置き換えて考えてみても、自分がハイエクばりに考察できているかと問えばそんな自信がないと思うからです。
だからといって絶望するわけではなく、せっかくこうやってハイエクの言葉にふれ、ハイエクと対話することで、今まで自分の世界にはなかった新しい要素を持てたという事はやっぱり貴重な経験です。
そんな経験を活かし、僕なりに思考を規定してしまわないために日々行っている対策方法をまとめてみましたのでご紹介します。
【対策方法】
- 健康であること
“健全な魂は健全な肉体に宿る”一番根本的なことですよね。
- メモを取る
自分の思考を客観視することは重要です。
- 普段やらないようなことをやる
多くの体験をすることは思考の幅を広げます。
- 無駄を楽しむ
“失敗は成功のもと”無駄なことなんて何ひとつないですよね。
- 会話の循環
会話中相手が本当に言いたいことを探す姿勢は大切です。シニフィアンとシニフィエには大きな隔たりがあるのが普通ですから。
- 平常心で情報に接する努力
主観というフィルターをできるだけ通さず一次情報に触れましょう。世の中恣意的な情報ばかりですから。
- 普通を疑う
“大衆は常に間違う”訳ですから、当たり前を疑いましょう。もちろん自分が大衆であるという自覚を持った上でですよ。
- 直感を否定しない
自分を信じる。できるようでなかなかできないこと。でも信じましょう。
- 全ては関連していると考える
このグローバル化している昨今、自分と関係ないことはないと自覚しましょう。それが遠い異国の地のニュースだとしても。
巷にあふれている成功法則で「思考は現実化する」という言葉をあなたも一度や二度は聞いたことがあるかと思いますが、なにもこれは成功するといったポジティブな側面だけではなく、ネガティブな側面にも多様に適用できるわけです。
むしろ僕はネガティブな要素に振れる機会の方が断然多いと考えております。
だからこそ意図的に対策する必要があると思い、僭越ながら対策法をお伝えさせていただいた訳です。
もちろん上記はあくまで一例ですので、あなた自身でしっくりくるものがあるのならそちらを実践していただければと思います。
さて。
こんな対策方法をあなたにお伝えしておきながら、なんで自分はこんなことを実践しているのかなぁ~と漠然と考えていたときに、少年ジャンプで連載中『HUNTER×HUNTER』ジンの台詞に出会いました。
ゴン :
「今は何を追ってるの?」
ジン :
「今か。少し説明がいるな」
「ゴン、オレ達が登ったこの木何だ?」
ゴン :
「え?世界樹でしょ?」
ジン :
「そうだな。下ではこの木を何て紹介してた?」
ゴン :
「世界で一番高い木で1764mあるって」
ジン :
「ん、それは『間違ってない』な」
「だがこの木の『真実』は、成長の止まった若木だ」
ゴン :
「・・・・・・・」
「え?」
ジン :
「栄養が足りなくて『これしか育たなかった』世界樹なんだ」
「本当の世界樹は、山脈に根付き、マグマを吸って、大気圏を越えて、なおデカくなる」
「この世界の“外側”で」
(中略)
ジン :
「オレ達が知ってる『この世界』は、とてつもなく大きな世界の、ほんの一部だって事にな」
(週間少年ジャンプ2012年3月19日号掲載 HUNTER×HUNTER「No.338樹上」より一部抜粋)
『HUNTER×HUNTER』を知らない人へ簡単に登場人物のご説明。ジンは主人公ゴンの父親です。『HUNTER×HUNTER』は主人公であるゴンが未だ見ぬ父親(ジン)と会う事を目的としたストーリで、上記はようやくジンに会えたという場面なのです。

で、このシーンにより気付けたことは、僕自身ジンのような視点に憧れを持っているということでした。
やっぱり思考が凝り固まっていると、当たり前ですが、視点も単一になるわけです。
結局僕らはジンのような視点がないのです。知識のアリナシではなく、視点がないのでこの発想が出てこないんですよね。
だから今まで自分になかった新しい発想に出会えると、単純に「おおっ!」って感動すると共に、自らでその視点を見つけ出せるようになりたい、と思うわけです。そして同時にその視点の源泉である著者に興味が向いてきます。
では『HUNTER×HUNTER』の著者である富樫義博さんについて少し考えてみましょう。
- ジンの視点の源泉は?
マンガのキャラクター作りを想像していただければ簡単かと思いますが、著者はキャラに様々な背景(人生)を投影して設定します。それが著者の頭の中だけで練られたものならばここまで魅力あるキャラ、作品は生まれてこないと僕は考えていて、つまり著者である富樫義博さんの人生がすべてのキャラ、作品に投影されている。ジンの世界観は富樫さんの世界観であり、イコール富樫さんは世界をジンのような思考で捉えているということなのだと僕は勝手に考えています。
そんな『HUNTER×HUNTER』は5,500万部の大ヒット(1~29巻累計)。
これは富樫さんの思考が多くの人に受け入れられているという結果です。週間連載を1年8ヶ月休載してもなお、集英社が『HUNTER×HUNTER』、富樫義博さんを手放すことができない現状を知れば、あなたも反対は出来ないかと思います。
自由な思考を持つということは、より多くの他者の役に立てるという事です。
同義として思考、世界の見方を規定しないことが自分の目的・目標には必要である、ということを最後にお伝えして本日の読書考察を終わりたいと思います。
もちろん言うは易き、行うは難し、という事を付け加えておきます。
(僕自身偉そうに言えた立場ではなく、日々易きに流れております、という自戒の念を込めてお伝えしております。苦笑)
それではここまで読んでいただきありがとうございました。
また次の記事でお会いできること楽しみにしております。
2012年3月18日
山本 和広
読書考察
- 自分が見ている「世界」は、世界のほんの一部である。
追伸
隷属の道とは全く関係ないのですが、冒頭に阪急MEN'S TOKYOに行った話をさせていただきましたので、無駄話として。
昔どこかの番組でナイナイの岡村さんが「生まれ変わるとしたら海老蔵!」と言っていましたが、僕も激しく同意します!(笑)
この目力・・・(汗)
(阪急MEN'S TOKYO Webサイトhttp://www.hankyu-dept.co.jp/mens-tokyo/ から写真転載)