「いってきます。」

「かわいそうねぇ癌だって」

いつもランニングをしている公園で筋トレをしていたら、
隣のベンチいた二人組みの奥様らしき方達が話をしていた。

30代前半くらいだろうか、
二人とも立派なゴールデンレトリバーを連れていた。

「12月まではあんなに元気だったのにね、まだ7歳だって」

「・・・ん?7歳???」

どうやら友達が飼っている犬の話らしい。

犬の死因の第1位が癌だと聞いたことがある。

癌の原因は過食やストレスと言われるが、
犬もそういうことなのだろうか。。。

ペットとはいえ、飼い主にとっては大切な家族だ。

今、その飼い主がどんな気持ちかは僕もわかる。



2008年1月15日 猫が死んだ。

7歳だった。

山本家にとって初めて飼ったペットが、アメショーの「りゅう」。

2000年(辰年)生まれということで、干支が同じである母が命名した。

猫はほっといても勝手に成長する。

子猫の頃は、家中の壁を引っ掻いたり、障子を破いたり、
机にあるしらすを勝手に食べたりとやりたい放題だったが、
年を重ねるにつれ日がな一日寝て過ごす。

寝たいときに寝て、食べたいときに食べて、遊びたいときに遊ぶ。

「ほんとこいつ幸せな奴だよなあ」って羨ましく思っていた。



「りゅう、少しやせた?」

2007年の12月だった。

食欲はいつも通りだったのでそんなには心配していなかった。

ただなんとなく気になったので、毎年1月に行っていた予防接種を
1ヶ月早めていつもの動物病院に連れいていった。

腎不全だった。

年が明けてからの病気の進行は早かった。

老廃物がうまく排出できなくなってきて、口からはアンモニア臭がし、
徐々に血液も止血できなくなり、傷ついた口はいつも血だらけだった。

見ているこっちは痛々しくなるが、当の本人はいつも通り、、、だったが

・・・徐々に、いつも上がれていた机に上がれなくなった。

・・・徐々に、トイレに行くこともできなくなった。

・・・徐々に、立ち上がることもできなくなった。

病気が判明してから1ヶ月も経たずにりゅうは死んでしまった。



2008年1月14日の夜。

2階にある僕の部屋のドアの前から変な音が聞こえた。

よく聞くと泣き声だ。

ドアを開けると、立ち上がることもできないはずのりゅうがそこにいた。

僕はりゅうを抱きかかえ部屋に入ってカーペットの上にそっと寝かした。

りゅうはしばらく寝ていたが、ベットにいる僕を見てベットに上がろうとする。

当然上がることはできないので、抱きかかえてベットに寝かした。

30分くらい経っただろうか。

ベットを下りようとする。

そのままおもむろに部屋を出ようとするので外に連れ出すと
姉の部屋に行きたがった。

りゅうは全部の部屋に挨拶でもするかのように行きたがった。



・・・・・あれは何だったのだろう。

「ありがとう」っていう挨拶だったのかな?

今でも不思議だが、立てる体力はほぼなく、
元気なときは僕の部屋になんか寄り付かなかったくせに、
最後の最後に来たあいつ。

そんなあいつを見て、思いっきり泣いてしまったのは言わないでおこう。



「どうだろうね、『いってきます』って感じだったのかもね」

ブログでご紹介したことある木坂さんと
「動物に死って概念あるんですかね?」と雑談していたとき、
りゅうの挨拶のことを話した。

その話を聞いた木坂さんがふと言った言葉だ。

前世とか来世とかはよくわからない。

でも何となく、りゅうは次のステージに「いってきます」って
感じだったのかもしれない。



僕らは死を知っている。

実感がなくてもいつかは死ぬことを誰もが知っている。

知っているからこそ「今を生きる」を理解はできる。

理解はできる、理解はできるのだが・・・

不思議なものだ。

終わりがあると知れば知るほど、終わりがないように感じるのだから。

だから、怠惰な日々を受け入れる。

だから、易き道を探し求める。



3歳になる甥っ子はたぶん死を知らない。

だって彼は今を生きるのに一生懸命だから。

毎日毎日エンドレスでプラレールで遊んでいる。

暇さえあれば電車を見に連れてけとせがむ。

寝てるとき以外はじっとしていない。

世界は狭しと動き回っている。



いつからだろう動かなくてもよくなったのは?

いつからだろう現状を変えることに恐れを抱くようになったのは?



「人生は過程である。」とトルストイは言った。

「宿屋よりも道中の方がよい。」とセルバンテスは言った。



歴史に名を残す人が言ったのだからと無思慮に受け入れるのもどうかとは思うが、
まずは受け入れて、実際に生きながら腑に落としていってもよいのではないかと思う。

ゴールデンレトリバーを連れた奥様の横で「ぜぇぜぇ」と腕立てをしながら、
りゅうのことを思い出しそんなことを考えていた。

一人暮らしなので誰に言うでもないが、明日も「いってきます」と
ランニングに出かけ道中を楽しみたいと思う今日この頃である。

りゅう



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