神話の法則

こんにちは。
山本です。

イチローが10年連続200本安打を達成し、白鵬は連勝記録を62に伸ばし4場所全勝優勝。こういったニュースを聞くと、純粋にすごいなーと思うと同時に、彼らの信念というか哲学、そしてモチベーションの根源は何だろうと勝手に妄想を膨らませてしまいます。だって単に好きというだけでこれほどの記録を達成できると思います?勿論、根底には自分が好きでやりたいこと、という源泉はあるでしょうけど、その源泉を乾かせない彼らの信念は一体なんなのか?すごいなーだけで済ますにはもったいない何かがあるに違いありません。これから彼らは天才と呼ばれるでしょう(イチローは既に呼ばれていますが)。そんな天才と同時代に生きているわけです。我々凡人は天才の思考を学ぶことにより、自身が描く理想とする自分に少しでも近づけるヒントを得られると僕は思います。


それでは、本日の読書考察本はこちらとなります。

神話の法則

神話の法則
著者:クリストファー・ボグラー
訳者:講元 美香
発行人:岡田 勲
発行:育英社

神話の法則の副題は「ライターズ・ジャーニー」。直訳すると「作家の旅」。簡単に言えばプロのライターやプロを目指しているライターが文章を構成するためのツールとして使用するのがこの神話の法則です。ただ神話の法則はライターの為だけに書かれた本ではありません。確かに本書はストーリー形式に展開して、それぞれの構成シーンにおいて様々な映画や寓話を例にして説明していますので、一見ライターの為の実用書、という印象を受ける人もいるかもしれません(副題は「ライターズ・ジャーニー」ですし)。しかし、神話の法則には人生における人間ドラマの本質が描かれていることを忘れてはいけません。実際に神話の法則のもととなったジョーゼフ・キャンベルが書いた「ヒーローズ・ジャーニー」は人間観察の結果を書いた本であり、神話の法則はそんなヒーローズ・ジャーニーを踏襲しているわけです。故に僕は以下を心がけて神話の法則を読み進めました。

ストーリーの中に綿密に盛り込まれた人生の教訓、つまり人生という旅の途中でよく起きるトラブルを予測するために書かれた<人生のガイドブック>としても読まれている。

神話の法則 序文から一部抜粋



それでは私なりの神話の法則の読書考察は以下となります。

1.物語の本質に流れるパターンは多くはない

我々は日々様々なストーリーに触れて生きています。安易に体感・想像できるものとしては、映画、ドラマ(テレビ全般といってもよい)、漫画、小説、ゲームでしょうか。移り気な我々現代人を飽きさせない作り手の必死さはあなたも感じていることでしょう。我々の心に残るストーリーはそれ自体がユニークです。例えば、ドラゴンボールとONE PIECEはそれぞれ違った面白さがあります。ただ、神話の法則を読んだ後気づくことは、ドラゴンボールだろうとONE PIECEだろうと、その根本に流れる基本はある程度カテゴライズできるという発見です。神話の法則の言葉を用いれば「原型」がある、ということです。

それは、現存する最古の文芸作品といわれている「ギルガメッシュ叙事詩」を読んでみても明らかです。紀元前二千年とも三千年とも前に書かれたといわれているギルガメッシュ叙事詩ですら、根底はドラゴンボール・ONE PIECEと一緒です。もっといえばダークナイトや水戸黄門も同じなのです。敵がいて、味方になり、宝のために冒険し、仲間の死があり、復活し・・・と。つまり、ストーリーの原型は変わってないということです。原型の上に乗っかる要素を作者の才能・努力によってユニークに表現していて、全く異なるストーリーだと認識させ、目新しさを我々に提示している。そしてそれら作品は実は根底では同じ、ということです。

そう考えると、ストーリーのパターンはそんなに多くありません。ライターでもなんでもない僕がいうのはおこがましいのですが、あくまで私見という事で大目に見てもらうという事で・・・ストーリーなんて極端に言えば、山型のストーリーか、その逆か、というように数種類しかないのです。そのパターンをいかにユニークに意義あるものに示しているものが、我々の目に留まるストーリーなのだといえると思います。それは、神話の法則を読み、ストーリーの根底には普遍の原型があるということを知ったからこその視点だと思います。そして、その視点を得て改めて、神話の法則は<人生のガイドブック>として読む本であると今の僕は考えます。

2.「いま、ここ」の自分の人生に生かせる思考を学ぶ

では実際に神話の法則を我々の生活と照らし合わせて考えてみましょう。といっても人生は人それぞれですから、ここで何か普遍的なメタファーを提示できるわけではないので、僭越ながら僕のケースをご紹介します。
(神話の法則の例と比較するとスケールが小さくてお恥ずかしいですが・・・笑)

■オーディール(最大の試練)とリウォード(報酬)

ここでちょっと単語の説明を先に。まっ僕がくどくど説明するより本文を引用した方があなたの理解も百万倍早くなるでしょうから、以下に引用いたします。

○オーディール(最大の試練)
 ヒーローは、恐るべき挑戦を受け、最強の敵と向き合うインモウスト・ケイヴ(最も危険な場所)の最深部に立っている。そこは、ジョーゼフ・キャンベルがオーディール(最大の試練)と呼ぶ核心となるステージである。そこは真にヒーローとなるための素晴らしい力を得る場所である。

○リウォード(報酬)
 オーディール(最大の試練)でのクライシス(重大局面)を切り抜ければ、ヒーローは死を生き抜いたリウォード(報酬)を受け取る。インモウスト・ケイヴ(最も危険な場所)に住むドラゴンを成敗したら、彼らは勝利の剣をつかみとり、リウォードを要求する。その勝利は束の間かもしれないが、ヒーローはその喜びを味わう。

さてでは実際、私山本のケースをご説明します。

僕にとってオーディール(最大の試練)は、とあるセミナーで講師を務めなくてはいけないという試練でした。最大の試練と呼ぶには大袈裟かもしれませんが、当時の僕にとっては間違いなくオーディール(最大の試練)でした。セミナー開催が近づくにつれ日々憂鬱になっていく自分がいました。というのも、当時僕は人前にでて話すのが得意ではありませんでしたし(今も得意という訳ではありませんが・・・)、自分を披露する場はできるだけ持ちたくない人間でした。ですが、どうしてもセミナー講師を務められる人が僕しかいなく、選択の余地はありませんでした。そんなセミナーの内容は新商品プレゼンでした。商品が既にあるのでプレゼンコンテンツを作成するのは基材料をつかって簡単に作れると思っていたのですが、それは間違いでした。自分の商品ではないからこそ、どうやって人に伝えたらいいかをすごーく悩みましたね。コンテンツを作ってはリハーサルし、直してはリハーサルを繰り返し、プラス、セミナーへの憂鬱そして緊張。毎日毎日この憂鬱と緊張が高まっていったのを今でも覚えています。そして当日、いつもは爆睡する移動中の飛行機の中もドキドキがとまりません。そして、頭が真っ白になりつつ会場入りし、会場を見渡してまた変な汗を大量にかき、トイレでリハーサル。そして運命の本番・・・どうなったかというと、

思ったより緊張もせず、きちんと商品説明もし、笑いも多少とりながら、うまくやれた自分がいました。

あなたも経験があると思いますが、やる前まではこの世の終わりと思うくらい嫌な事・逃げ出したいことでも、やってみたら案外あっけなく終わってしまうということはよくあることです。まさにこのセミナーが僕にとっての「それ」でした。そして、僕がこのオーディール(最大の試練)を経験して得たリウォード(報酬)は「人前に出て伝えたいことを相手に伝える難しさ」です。このリウォード(報酬)は僕の人生をまた一段と深めてくれているのに役立っています。というもの、この難しさを知ったことにより、相手と真摯に向き合うように心がけるようになりましたし、どうしたらもっとうまく伝えられるかを考え・学ぶ姿勢が得られました。

社会にでると僕の理解を越えた人が沢山います。それは良い意味でも悪い意味でもです。人前に出て話すことを嫌がる人は案外います。セミナーを頼まれても当たり前のように断る人が多い事実に僕は驚きます。でもそれってもったいないことだと思いませんか?はっきりいって我々が生きているこの世界で、生死を賭した依頼ってきませんよね?逆を言えば、何をやったって死ぬことはない、と割り切れると思うんですよ。死ぬ訳じゃないなら、恥をかいたっていいじゃない、と。だって、それはどっちに転んでもオーディール(最大の試練)を乗り越えてリウォード(報酬)となるわけですから。

神話の法則は何もフィクションの世界だけに生かされるものではありません。あなたがもし「自分の人生は平凡である」と考えていたら、それは大きな間違いだと思います。それは、

事実は小説より奇なり

という言葉があるように、我々の生きているこの世界はフィクションより多様にとんでいると僕は思うからです。あなたも自分の体験を思い返していただければ数多くあるはずです。良い事も悪い事も含めて。ストーリーは結局は理にかなった結果に導かれます。それは我々人間が構想・構成しているからこそ、有限の結果に終結するのです。ただ現実はそうはいかない。だとしたら、ストーリーの原型を理解し、それを生かして人生を生きる方が理解を越えた経験をしたときのリウォード(報酬)は大きいと僕は考えています。

神話の法則は少しお高く分厚い本ですが、人生に生かせる視点は多く学べる良書だと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

2010年9月29日
山本 和広

読書考察

  • ストーリーの根底にある普遍の原型は我々の人生にも活かせる。

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